愛しいからこそ滅ぼす…。愛しいからこそ滅ぼされたい…。
written by 紫苑
おもな登場人物
リナ ガウリィ ゼルガディス アメリア 獣神官ゼロス 獣王ゼラス=メタリウム 紫苑 ミルガズィア
「ゼロス様、紫苑の最後のわがままを聞いて下さい…。」
あたしはその無残な光景を、静かに見ているしかなかった…。
「ちょっとアメリアいったいここ何処なのよ?」
「私に聞かれても…いきなりのことでしたし…」
「ったくセイルーンとは本当によくよく騒動の多い国だな」
「何がどうなったんだ?」
あたし達はセイルーンの祈りの間である地下を訪れた……がいきなし六紡星の中央に引きずり込まれてしまったのだ…。いきなりすぎるって…今、普段の行いのせいじゃんっておもった奴! 後でスコップぐざぐさの刑だぞ!
「とにかく、戻る方法探しましょ。」
あたし達は、歩き出した。
…無事帰れないかもしれなひ…
「ゼラス様お呼びですか?」
いつもゼラスの身の回りの世話をしている紫苑が入ってきた。
「あんた生まれたてでしょ? 経験が少なすぎるから今度…………へ行ってきなさい。あ、だいじょーぶよ。ゼロスもいっしょだから」
紫苑は「ゼロスもいっしょだから」と言う言葉を聞いて元気に「はい!」と返事を返した。どんな結果が待っているかは知らずに…
「…もしかしてあたし達千年前にタイムスリップしたんじゃ?」
頭上を見上げてあたしは言う…。そう今あたし達のい場所では、しらじらしくもゴールドドラゴンとブラックドラゴンが神官と魔族に対立している所だった…。あれは!
《ゼロス!》もう一人は知らないが…だがゼロスがここにいると言うことは…。
「リナさん。これって…」
アメリアがふるえながら言う。無理もない。正義を信じてる彼女にとって、あまりこれは見られたものじゃないからだ。残酷なドラゴンの殺し方。命をもてあそぶような…。
そうこれは [降魔戦争]!
「ーっな!?」
おもわず声を上げるゼルガディス。いつものほほーんとしているガウリィも、もうすでに光の剣をぬいている。アメリアは………。当たり前すぎるパターンで………。
「ゼロスさん! やめて下さい! たとえ歴史が変わろうと、私に正義の心がある限り貴方の悪事は止めてみせる! この世に悪が栄えたためしがないことを、今アメリアが証明します」
すると、声が聞こえたのかゼロスが地上に降りてきた!
「はて、元気のよいお嬢さん。貴女は何処で僕の名を?」
興味で聞いているのか、竜族の攻撃を避けるバリアーを全体に張っている。
「とぼけても無駄です! ゼロスさん! 貴方の悪事はちゃあーんと…」
「おいアメリア! こいつは俺達と会う前のゼロスじゃないのか?」
「そうかもしれないわよ!」
「リナ、何がなんだか、よくわからんのだが…。」
敢えてあたしはガウリィを無視する。……どうせ説明してもわかんないだろうから…
「ゼロス様お知り合いですか?」
ゼロスの横にいる、人の姿をしているがおそらく魔族だろう。中級ぐらいだろうか、あたしのはじめて見る顔がゼロスに聞いた。ずいぶん親しそうだが、これはもしかして…。
「いいえ、紫苑さん。でも向こうは僕を知ってるみたいですね。」
やっぱりあたし達と出会う前のゼロスか…。
「あたし達は、千年以上先の未来から訳も分からず来たみたい…。んで帰り道を探してる時、あんたを見つけたって訳。」
「ほう」
なにやら面白げに聞いてるが、どうやら信じてくれたようだ。
「まあ事が済めば、あなた方を帰してさしあげましょう。次元がゆがんだのは僕のせいでしょうから」
と、再び天空に舞い上がる。すべての竜族を抹殺する気だ! まずい! ゼロスの杖が向いている方向。あれは…ミルガズィアさん!? あたしがもうダメだ!と思う間もなく、アメリアが飛び上がって止めにかかる。それをゼロスが軽くあしらう。
「じっとしててくださいね。」
ゼロスが言って再び空に向く! ミルガズィアさんがさっきのすきを逃すはずもない。もう術を唱え終わりゼロスが前を向いたその瞬間!
ドンっ!
重い衝撃が空をはしった…。一瞬何が起こったのかあたしには分からなかった…
ただあたし達の目に入ったものは、半ば体を引き裂かれ、みずからゼロスをかばった紫苑の苦しそうな瞳だけだった…。誰が見ても、あれは…助からないだろう。その事を悟ってか、彼女は微笑んだ。虚ろな…迷うことのない、諦めかかったその顔で…。
「ゼロス様、紫苑の最後のわがままを聞いて下さい…。」
おそらく、彼女は純粋な魔族では無い…。その時あたしは感じた…。
「…どうぞ紫苑さん。」
「…愛しい貴方の手で、私を滅ぼして下さい…。」
「僕はまた獣王様に怒られちゃいますね。」
わずかに止めさせようとアメリアが手を伸ばす。けどあたしはその手を制す。それが紫苑の望んでいることだったから…。…とさっ…小さな音を立てて、紫苑が地面に落ちる。ゼロスの放った光球によって、そしてその亡骸は虚空に溶けた…。
そしてゼロスはわずかに残った竜とあたし達を残し、何も言わずに闇に消えた。
すぐその後、あたしの足元にふたたび六紡星が現れる。ゼロスの仕業だろう。一瞬めまいにもにた感覚を感じながら目を開けると、そこは元の祈りの間だった。
「戻ったのか?」
ゼルが不思議そうに辺りを見回す。
「そう、みたいね…。」
呟くあたし。
「オレ達はいったいどうなっちまってたんだ?」
「分からないけど…。どうしたのアメリア、具合悪いの?」
今にも泣きそうなアメリア。
「大丈夫ですよ!」
彼女は無理に笑顔を作ってみせる。
「…無理はするな…。」
ゼルが優しく言う…。ぱっとアメリアの緊張が解け、ぽろぽろ涙をこぼし始める。
やっぱりアメリアにはさっきの光景がこたえたのだろう…。
「こんなの、こんなの正義じゃありません! 悲しすぎます! どうして何もできなかったんだろうって。もしかしたら助けることもできたけれど、そう言うのいやだから! いやだけど…。ただ悲しいんです。人としての感情を死なせた事に、耐えられないんです!」
「アメリア、そう言うことは忘れようぜ。」
ガウリィが言う。
「そうよ。竜族は全滅しなかったんだし! 泣いてても千年も前の事なんだから、忘れるのが一番よ。ね!」
そう、これは千年も前に終わったことだから…。
「そう、ですよね…。」
涙を拭いて、また元気に笑うアメリア。
「うっしゃー。飯喰いにいくっかー!」
「おう!」
「ったく、付き合ってやるか…。」
「まってくださいよぉっ!」
あたし達は、またまた風にのって、自由な旅をします!終わり
―紫苑のあとがき―
どうも滅びたはずの紫苑でーす。これが載るか載らないか分かりませんが(載ったらゼロス様ファンに殺される!)とにかく一生懸命作りました。(自分を入れたかっただけかも…。でも努力は認めてね♪)
一番入れたかったセリフは、「スコップでぐざぐさっと」と「愛しいからこそ滅ぼす」でした。(この場合愛しい人に滅ぼされたい!でしたけど)と、とにかく紫苑は10%ぐらいは人間の血が混じっていると言う事でした! だからゼラス様の身の回りのお世話をしながらも、ゼロスに恋心を抱いていたんですね。(最近はヴァル様の方にかたむきかけてるけど…。あぁ、ファンの人の目線がこわひ…。)
まぁとにかくどなかに読んでいただけると嬉しいです。では、さようなら!(暗転)
―幕―