魔竜王(ガーヴ)のゆううつ

written by 加流ネメシス



三、意外かな マヌケな罠に黒い影


「そこにいるのは分かっているんだぞ…
 ラーシャート!!
 オレは視線を感じ、そう言うと同時に魔力弾を視線のあった方にブチかました。
 ちゅどぉぉぉぉぉん!!
「ぐあっつ!!」
 爆発音の少し後に、短い悲鳴が上がる。
 手応えありっ!!
 ここはオレの本拠地にあるひのき風呂。
 オレは湯船から出ると、目を回してノビているラーシャートに歩み寄り、その胸ぐらをガッとつかむ。
「どう言うつもりだ…ああ? ラーシャート!!
 まさか、このオレを見せ物にして金儲けしよーと、考えてんじゃねーだろーなぁ?」
「う…うう…ディルス王宮にもぐり込むのにも資金がかかります!!
 ガーヴ様が赤眼の魔王(ルビー・アイ)様に謀反なんて起こさなければ、こんなことをしなくても済むのですっ!!」
「な…なんだと!?」
 オレは、ラーシャートのイヤミに腹が立った。
「オレが何の考えもなしに、そんなことを――」
「ガーヴ様!! どうなされたのですかっ!?」
 そのとき、丁度風呂場に飛び込んで来たヴァルの声がオレの言葉をさえぎった。
 オレはラーシャートを放り出し。
「い…いや、なんでもねぇーーーー。」
 と、ヴァルに答える。
「なんでもない訳ありませんよ!! さっきの爆発音はっ!!
 ガーヴ様の変なウワサも耳にしています…
 これからは、ガーヴ様が変なコトされないようオレが結界を張りますっ!!!!!!!!」
 言って、口をヘの字に結んで、キッと目を鋭くするヴァル。
「ありがとな。ヴァル。しかし、相手がラーシャートとなると、お前じゃかなうまい!?」
 目を伏せて、オレは少し考えてから…
「冥王(ヘルマスター)との闘いもあるだろうしな…
 力が欲しいか? ヴァル!?」
「もちろんです、ガーヴ様!!
 ガーヴ様のお役に立てるなら、オレ、何だってします!!」
 迷わず答えるヴァル。
「そうか…じゃ、お前に力をやろう…」
 言ってヴァルに歩み寄り、頭をガッチリつかんで抱き寄せ、オレの腕からヴァルの頭に魔力を注ぐ…
 うぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああっっっっっ!!!!!!!!
 ヴァルの悲鳴と共に、彼の頭に角が生える…
「お前にオレの名をやろう!!
 ヴァルガーヴと名乗るがいい!!」
 オレはヴァルに向ってそう叫んだ。



「ガーヴ様、なぜ何も聞かないんです?
 オレのこと…」
 俺の背中を流しながら、ヴァルがそんな質問をして来た。
「そんなこたぁ〜〜〜オレはいちいち気にしないタチでね。お前が話したくなったら、話しゃーいい…」
 ヴァルは意気込んで。
「そんな訳にはいきません!!
 どんなヤツなのか分からない、オレを置いてくれたばかりか、力を与えてくださったのですから!!」
 声のトーンを落として更に続けるヴァル。
「知っているのでしょ?
 オレがエンシェントドラゴンだって言うこと…」
「まーな。お前だって、オレがなぜ赤眼の魔王に謀反を起こしたか、聞いちゃいねーだろーが。」
「ガーヴ様…」
 そして、うつ向きながら。
「魔族のことは、よく分かりませんが、オレの一族は同じ神に仕えているハズのゴールデンドラゴンによって、滅ぼされたのです…
 オレは、その最後の生き残り…
 魔族の間でも、こんなことが起こっているのですか!?」
 オレはヴァルの質問には答えず眉をひそめたのだった…



「何だとぅ!?」
 オレは、入浴シーンを見せ物にしていた、フザケたヤローの探索の報告をカンヅェルから聞いて声を上げた。
「間違いありません。根城と思われる場所に何度か使いを放ったのですが、すべて返り討ちに遭った模様です。」
 淡々と無表情に言うカンヅェル。
 生け捕りにして、オレがブチ倒してやろーと思っていたのだが…
「おもしろい!! こーなったら、このオレ自ら出向いてやろーじゃねぇーか!!」
 いきり立つオレを、カンヅェルはさすがに慌てて止めに入る。
「お…お待ちください!! ガーヴ様!!!!!!!
 その様な訳も分からぬ相手に、ガーヴ様が出向くとは―――
 あっ!!」
 カンヅェルが言い終わる前に、オレは瞬間移動をした。



「ここか…カンヅェルが言ってたのは…」
 うっそうとした森の中、古びた城の前に立ちそう呟く。
 森の木々の間からこぼれ落ちるこぼれ日が、今はもう使われていない古城を照らす。
 どこからともなく、鳩の鳴く声が聞こえるだけのいたって平穏な風景だ。
 城の中に入ろうと、一歩踏み出したその時―――
「ガーヴ様っ!! オレも連れて行ってください!!!!!!」
「ヴァル!?」
 オレは声のした方――ヴァルに振り向く。
「やっと、ガーヴ様のお役に立てる時が来たのです!!
 オレもどうか、連れて行ってください!!
 その、他人に見せるのは勿体ない、ガーヴ様の入浴シーンを見せたヤローを、ブッ倒したいんです!!」
「な…なんか、今、妙なこと言わなかったか?」
「い…いえ!! それよりはやく参りましょう!!」
 慌ててヴァルはそう言うと、オレの腕を取ってグイグイ城の中へ引っぱっていった。
 使われなくなって、間もないのか、いたって中はきれいだった。
 ガランとしていて、何の気配も感じない…
 オレとヴァルは、王座の間だったと思われる広間に出た。
 その時――――――
「やっと出て来てくれたんだね、ガーヴ…」
 オレは、その聞き覚えのある声を耳にした途端息が止まった。
 全身から冷汗が流れ落ち、その場で固まる。
 恐る恐るゆっくりと声がした方へ振り向くと、そこには、ゆるくウェイブのかかった黒い髪をした美少年―――――
 冥王フィブリゾがいたのだった…



 オレは宙を舞っていた。
 大量の血を吐きながら。
 壁に全身を強く叩き付けられ、床に倒れ込む。
 やっとの思いで顔を上げると、首にフィブリゾの腕を巻き付けられた、ヴァルの姿があった。
「人質なんて取らなくたって、充分君なんて倒せるんだけどね…
 それじゃ、つまらないでしょ?
 こうすれば、いたぶり、いたぶり君の極上の負の感情を頂けるって訳さ。」
「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
 痛みと悔やしさにまかせ、オレは叫んだ。
「いいねぇ…その調子だよ、ガーヴ…
 まっ、これも僕の君に対する愛情みたいなものさ。
 好きだから滅ぼしたい、と言うね…
 それにしても、君はつくづくおかしなヤツだね。
 エンシェントドラゴンなんか仲間にして、何の得になる?」
 まるで、からかうように言い放つ。
「うるせぇ!! てめーに何が分かるっ!!!!!!!!!!!!」
 叫んだその途端、再びオレは宙に舞い、今度は床に激しく叩き付けられる。
 ぐぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
「ガーヴ様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!! ガーヴ様ぁぁぁぁぁ!!!!!」
 ヴァルの絶叫が、はるか遠くから聞こえて来ている様に感じた。
 オレは更めて、冥王との力の差を思い知らされることとなった。
 床を這いながら、ヴァルに向かう。
 まるで、わずか数メートルが永遠に感じる…
「いいカッコだね…君にはそうやって、地面を這いつくばる、その姿がお似合いだよ。」
 クスクスクス…
 いたずらっぽい子供の顔で笑う冥王!!
 その冥王が、今度は虚空をつかむ。
 瞬間、内臓が握り潰される様な激痛がオレを襲う!!
 うっっっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 床を転げ回りながら、冥王のどんどん高くなる笑い声を耳にする。
「さぁ、君の血で、この王座の間に赤い絨毯(じゅうたん)を敷いてくれよ!!」
 幼い顔を醜く歪めて、あざ笑う。
 ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!
 オレはこのまま、ヤツの立てたマヌケな作戦によって滅ぼされちまうのかよ!!!!!!!!!!?
 涙がオレの頬をつたう。
 こんな…こんなヤツの前で涙を見せるなんて!!!!!
「あっはっはっはっはっ…
 君にも涙なんて、流せるんだねえ…
 そうだ!!
 このヴァルとかと言うヤツにも、何かしてあげなくっちゃ…」
 チラっと腕の中のヴァルに視線を向けた冥王に向かって、一つの魔力弾が飛び込んで来たのはまさに、その時だった…



次回予告


 大ピンチのガーヴを救ったのは一体!?
 そして、冥王の手から逃れられるのか?
 ガーヴの、ヴァルの運命はいかに!?
 最終話「嘆かわし オレはお笑い魔王かよ!?」
 お楽しみに!!


 ※次回登場のオリジナルキャラクターは、実は、「ガオ〇イガー」の長官の姿をモデルにしています。長官を知っている方は、長官を思い浮かべて読んでみると、良いかも…


「四、嘆かわし オレはお笑い魔王かよ!?」


HTML EDIT BY αえん

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