魔竜王(ガーヴ)のゆううつ
written by 加流ネメシス
二、情けなや あんな罠にかかるとは
「おぉ、来たか!! 待っておったぞ!!!!!」
風呂から広間に戻ったオレを、待ち構えていたじーさんの第一声がそれだった。
じーさんは、満面の笑顔のもと、机の引き出しから取り出すと、それをバン!!と、広げた――――――
ぴききっっ!!
オレは一瞬にして凍付いた。
じーさんの説明なんぞ、もちろん耳に入っちゃいねーー。
「お…………おい!!!!!!!!!!
こっ…これは何だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ドラゴンだの、獣だのの頭がゴチャゴチャ付いている合成獣(キメラ)の完成予想図の丁度まん中を指差しながら、やっとの思いでオレは声をしぼり出す。
「決まっとるじゃろ。あんたの上半身じゃ。」
いともへーぜんと答えやがる、じーさん。
うきょぉぉぉぉぉぉおうおぅぉうおぅ〜〜〜〜!!!!!!!!
「リナ=インバースにしようと思っとったんじゃが、女性とゆーものは自分の美的感覚に少しでもズレていると、どんなに素晴らしい物にもケチを付けたがるよーでのぉ…
あげ句の果てに、このわしを牢にブチ込みおった。
実に悲しいもんじゃ。
人生の楽しみの半分以上を失ったと言っても、過言じゃない!!
まっ、そのお鉢がお前さんに回わったとゆー訳じゃ。」
「と、ゆー訳じゃ、じゃねぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!!!
何でよりによって、このオレなんだよっ!!
他にだって、腕の立つヤツはいくらでもいるだろーーーーーーーーーーがっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
オレはじーさんを張り倒すのも忘れて、たまらず声を張り上げる。
「お前さん、最近、露天風呂に入ったことがあるじゃろ?」
「あ゛…あぁ…そー言えば、そんなことも…
それが何だって言うんだよ!?」
オレは今にもじーさんに取っつかみそうな勢いで言う。
「実はの、わしを牢から出してくれたヤツが、クリスタルレンズを組み合わせ、別の所の湯煙にお前さんの入浴シーンを投影して、見せ物にさせておったんじゃ。
それが何と!!!!!!!!!!!!!!
老若男女に問わず大好評!!!!!!!!!!!
特にその乳には心を奪われるとか何とかで、ウワサを呼んでな。
さっき確認させてもらったんじゃが、わしも実験で何人もの男の体を見て来たが、お前さん程筋肉の付き具合のバランスの取れた、素晴らしい体は、まず、お目にかかったことはない!!!!!!!!!」
じーさんは頬を赤く染めた顔で、上目使いの視線をオレに向けた。
う…う゛う゛………ま……さか……
オレの背筋に冷たいものが走る。
更にじーさんの熱弁は続く。
「そう思っての…
お前さんのその乳で敵を惑わし、強大な魔力容量(キャパシティ)と、剣術と力でなぎ倒す!!
これこそが、究極の超合成獣(スーパーキメラ)と言えよう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
うっっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!
オレは頭をかかえ込む。
「ち……ち……ち……ち……ち…乳ぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
ぎこちないしぐさで、思わず服を着ているのを忘れ胸を隠し、今にも消えてなくなりそうな意識を必死で保つ。
胸を見られた女の心境がなんとなく分かったよーな気がする。
当然、オレは自分の体に自信がある。
だから、裸なんぞ見られても別に構わんが、その胸(あえて乳とは言わねぇー)に粘り付くよーな視線の集中砲火を向けられているとあっちゃぁ話は別だっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ブッ殺ス………………!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
オレは自分でもはっきりと分かるくらい、顔を怒りと恥かしさで真っ赤に染め上げ、魔力を問答無用で解放したのだった…
気が付くと、洞窟はものの見事に天井ごと吹き飛んでいた。
辺りはガレキの山と化し、じーさんの姿はどこにもなかった。
たぶん、吹き飛ばされて死んじまったか、ガレキの下敷きにでもなっているんだろー。
ふと、あの薄青い髪の少年がいた方に目をやった。
少年は地面にその裸身を横たえていた。
オレは急いで少年に駆け寄ると、抱き上げて、胸に耳を当て、心臓が動いているか確かめた…
トクントクントクン…
――――どうやら大丈夫らしい。
オレは思わずホッとする。
このまま、ほっぽっとく訳にもいかねーし、ひとまず連れて帰っか。
コートを脱いで、少年に着せてやると、本拠地に瞬間移動した。
「ガーヴ様っ!! 一体どこへ行かれたのですかっ!?」
ラルタークの声がオレを出迎える。
ラルタークは転がるようにオレに駆け寄り、腕の中の少年を見るなり。
「何ですか? その少年はっ!!
どこの馬の骨とも分からぬ者を連れ込んでもらっては困りますっ!!!!!!!!!」
出たな!!!!! ラルタークのお説教攻撃!!!!!!!!!
「エンシェントドラゴンの馬の骨…」
オレはあっさりと言ってやる。
コイツと言い、ラーシャートと言い、お説教だのイヤミだのがとことん好きなよーだ。
影でヤツらに中指を何度おっ立てたものか…
部下制作完全に失敗したな…オレ…
「…………!!!!!!!!! エンシェントドラゴンと言ったら――」
ラルタークの言葉をさえぎったのは、またもや転がり込んで来た、ラーシャートの上げた声だった。
ふうっ…
これで、ラルタークの説教から逃れられたぜ…
グゥドタイミング(はぁと) ラーシャートと、思いつつ…
「何だ!? ラーシャート!」
「そ…それが……………」
なぜか言いよどむ、ラーシャート。
「何だ!! はやく言えっ!!」
オレは少しイライラした声で言う。
「はぁ……実はガーヴ様の……その…ち…乳が人間共の間で話題になっておりまして……」
しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!
あのじーさんをブチ倒す前に、オレの入浴シーンを見せ物にしていたヤツを、聞き出すの忘れてたああぁぁぁぁぁああああああ………
オレの目の前が一瞬にしてまっ暗になる。
「しかも、その映像を特殊な魔法を用いて保存し、あっちこっちで流しているとか…」
「な…何と言う事!!!!!!!!!!
これでは部下に示しが付かないどころか、他の腹心の配下にでも知れたら、魔族じゅうのいい笑い者になりますぞ!!
だいたい、ガーヴ様は魔王としての自覚がなさすぎです!!
人間界なんぞをフラついているから――――――」
しかし、えんえんと続くラルタークの説教が、ボー然と天井を見上げている、オレの耳に届くハズがなかった…
次回予告
この事件の真の黒幕とは!?
謎の少年はこの先どうなる?
「意外かな マヌケな罠に黒い影」
お楽しみに!!
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