From 22話 to 23話

written by フィブリンかおる




…………お……………ちゃ………………ん……………………

おね………………え…………………ちゃん…………………

幽かな、あたしを呼ぶ声が聞こえる。

「くすくすくすくすくすくすくす………………まだ判らないの、お姉ちゃん?

 その調子だと、ここがどこかも気が付いていないみたいだね」

心底人をばかにしたふざけた声がする。

判らない分けないじゃない!

忘れようとしたって忘れられない声━━━━━━━冥王(ヘルマスター)フィブリゾ!

あたしが声の正体を認識した瞬間、フィブリゾは姿を現した。

「やっと気が付いてくれたんだ………よかった、このまま無視されるっていうのも

 なんか悲しいしね」

他人の夢の中に勝手に出てきて言う事か!

「………………で、何しにきたのよ、フィブリゾ」

「再確認をしにきただけさ、僕がお姉ちゃんに望んでいる事を………………」

ぎりっ!

奥歯を噛む音がやけに大きく聞こえる。夢の中のはずなのに。

「やだなぁ、そんな怖い目で睨まなくったっていいのに…………………

 ただ、声に出して言ってほしいだけなんだ、ここなら、とやかく言う連中もいないこ

 とだし…………もちろん、いきなり行動で示してくれるっていうのもありだからね」

にこにこ、にこにこ。

満足そうな笑顔をあたしに見せている。

………喰っているのね、あたしを………………

屈辱感に声が震えないよう細心の注意をしながら答えてやる。

「いちいち宣誓しないと信用してもらえないなんて、あたしもなめられたわね………

  ………リクエストは判っている……………応える、応えないは別としてもね」

とたんに残念そうな顔になる。

「僕の言ってる事、判らない? 判らないなら………」

『うわああああああああああああああああああああああ

あ!!!!!!!!!!』

「ガウリイ!」

ガウリイの絶叫が響きわたる。

にこにこ、にこにこ。

あいつはまた、笑顔を浮かべる。

言うまで、ガウリイをいたぶるつもりね………………それならば。

「アレを………重破斬(ギガ・スレイブ)を唱えて欲しいんでしょう?」

平常心を保ちながら答える。

「ちぇっ………………」

面白くなさそうに、舌打ちをする。

「リクエストには応えたんだから、そろそろ帰ってもらえないかしら?

 こんな消化不良起こしそうな夢、美容に好くなさそうだし!」

ぱちん。

フィブリゾが指を鳴らす。

「そ・う・だ! 僕のお願い聞いてくれたから、ご褒美にお姉ちゃんの知りたいこと

 ひとつだけ教えてあげるよ」

すうっと、あたしの眼前まで寄ってくる。

あたしが何を聞いてくるか、お見通しって顔ね。

聞きたいのはやまやまだが、これ以上こいつを悦ばしてやる必要はない。

「御親切にありがとう! でも、あんたに教えて貰う事も、聞きたい事もないわ」

「………お姉ちゃん。人間素直なのが一番だよ?」

何も言わずに真っ正面からフィブリゾを睨み付ける。

「ふぅ、強情なんだね、リナ=インバース………………それなら、こっちも趣向を少し

 変えさせて貰うよ………。いつまで………、今のままかな?」

くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

笑い声だけ残し姿を消した。

突然、風景が変わる。何かの巨大な建造物の中のようだ。

目を凝らしてみると、遠くの祭壇か何かの上でうごめく影が二つある。

これが、フィブリゾの罠だとしてもこのままでは埒があかない。

とっさに、あたしは駆け出した。

程なく影の正体があたしの予感どうりだと分かった。

一つは両手に鎖をつけられ壁に繋がれているガウリイ。

かろうじて足は床に付いているが、上半身は前のめりになっている。

激しく抵抗したようで全身に汗をぐっしょりとかき、ぐったりと顔をうつむいている。

かなり、ひどい様子だが、懸かる一筋の髪のせいで表情まで読みとれないのが、

あたしにとっては唯一の救いだ。

もう一つは巻物と短剣を持った魔族、かなり高位な魔族なのだろう。

感じからして、ガウリイを何かの生贄に捧げるつもりね。

そんなことは絶対にさせない!

「………………………我にさらなる魔力を与えよ!」

走る足を止めずに、まずは増幅の呪文を唱える。

魔族はあたしに背を向けているせいか、まったく気づいていない。

よし、続けて呪文を唱える。

「悪夢の王の一片よ、天空のいましめ解き放たれし」

不思議な残響を残しつつ、呪力結界が生まれ、気が張りつめる。

おっしゃあ! 敵に気づいて貰うために、大声で続きを唱える。

「凍れる黒き虚無の刃よ

 我が力 我が身となりて 共に滅びの道を歩まん

 神々の魂すらも打ち砕き」

敵がこっちを振り向く。この勝負あたしが貰った。

混沌の言語(カオスワーズ)を放とうとした瞬間、ガウリイが突然上を向いて微笑んだ。

あたしも連れれて上を見上げた。

『神滅斬(ラグナ・ブレード)!』

不思議な残響は止み、黒き虚無の刃と共に降ってくるのは、アタシ?!

声も上げる暇もなく真っ二つに切られた魔族は塵となって消えた。

ガウリイを戒めていた鎖は、魔族が作り上げていた物らしく、消滅と同時に闇に

溶けて消えた。

その場にがくっとひざを付くガウリイ、

『ガウリイ! しっかりして、大丈夫? ねえ、ガウリイ!』

激しく揺すぶられ、やっと目の焦点が合い始める。

「ふ…う………ん? リナ?……………ごめん……………心配か━━━━━━」

言葉が途中で途切れる。

不審に思い振り返るアタシ。

「ガウリイ、離れて! そいつは偽物よ!」

「ガウリイ、惑わされないで! あれは幻よ!」

声が見事に唱和する。

ガウリイは再びアタシの方を向く。

「あれはこの迷宮の作り出す偽物なのよ…………何度もあたしも捕まったわ」

ガウリイがあたしからアタシを庇うように立とうとする。

「ダメ! あれを信じちゃだめなのよ、信じることによって実体化する魔物なのよ」

ガウリイが天を仰ぎみる。

「じゃあ、無視(シカト)すればいい理由(わけ)か?」

「あら、珍しく冴えてるじゃないの、そうゆうことで、一気に出口まで行くわよ!」

駆け出す二人。

「ぉらぁ、待たんか! ガウ………………………」

スカッ

すれ違いざまにラリアットを食らわしてやろうとした腕をすり抜けていく。

「えっ? うそ………………」

「ほらね!」

驚愕に震えるあたしとはうらはらに、アタシが明るい声でガウリイに話しかける。

「━━━━━そうみたいだな、それなら、一気に行こう!」

「もちろんよ!」

振り返って、一瞬あたしに笑みを向ける。

どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき

動悸が止まらない。胸が苦しくなる。

でも、今はガウリイを追いかけなくっちゃ、フィブリゾに何されるか━━━━━━

そんな予感めいたものが、あたしの脳裏を過ぎる。

とにかく追いつこう。向こうが徒歩なら。

「翔封界(レイ・ウイング)」

高速飛翔の呪文を唱え、床ぎりぎりの超低空飛行をする。

あっとゆう間に二人の姿が有視界内に入る。

「くぉらぁぁぁぁぁぁぁぁ、二人とも止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

声の限り絶叫する、が止まらない。

当たり前の話だ、あたしは今は敵なのだから━━━━━━━━っって、まだ追いつかない?

おかしい。

根性入れて翔封界(レイ・ウイング)スピードを上げてみたが、結果は変わらなかった。

さて、どうしたもんだか……………

あたしが対処方について考えを巡らせていると、

「げほげほげほごほっごふっっっっっっ!」

突然激しくせき込んで、アタシが膝を付いた。

「リ、リナ? だいじょう━━━━━━!!!!!!

 おい、しっかりしろ!」

アタシの手を染める紅い流れに、弾かれたように駆け寄る、ガウリイ。

「だい………じょうぶ……よ…はぁ、ちょこっと、呪文を使い、はあぁ……すぎた………だけ…………」

息を切らせながら言う。

「出口までは、まだあるのか?」

首を振り、

「そんなに…………な、い……ハズ…………」

「そうか、乗り心地については勘弁してくれよ! 非常事態だからな」

言うが早いか、アタシをずた袋かの様に担いで、すたこらさっさと走り出す。

あたしも負けじと追いかける。

にこにこ、にこにこ。

例の笑顔をまた浮かべ、ばいばーいと手を振ってきた。

『おねぇちゃん、おいしいよ………………くすっ、ご・ち・そ・う・さ・ま』

フィブリゾの声があたしの頭の中に響く。

「いつまで、こうしてるつもりよ!」

『もう少しだけね………………くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす』

「リナ、出口だ!」

ガウリイが景気よく叫ぶ声に、現実に引き戻される。

「ま、まっ━━━━━━」

しゅばっっっ

目の前がWHITE OUTする。



視力が戻ったとき、二人はどこかの原っぱにいた。

「ガウリイもう降ろしてよ、もう大丈夫だから」

一向に降ろす気配のないガウリイ。

「このまま、街まで………いていてててて」

アタシが頭をぽかぽかと叩いている。

「………………バカ、あんただって疲れてるでしょ? あたしは、とりあえず歩

くのには問題無いから………」

まだ、納得のいった顔ではないが、そっとアタシを降ろした。

とたん、抱きつくアタシ。

「????」

何が起こったか分からないまでも、そっと、抱きしめるガウリイ。

小刻みに肩が揺れている。

身体を屈め目線の高さを合わせる。

「……………すまん、心配かけさせたな…………………リナ………………」

アタシの髪をやさしく撫でている。

あたしの見たことのない、やさしい顔をしたガウリイが

むかっ

何故かこの光景を見ていると、いらいらしてくる。

胸にヘンな気持ちが広がって━━━━━━

あ━━━━━━━。こらっ!くらげ━━━━━━━!!!!

あたしと偽物の区別もつかんかい? ゼロスの時は見破れたっちゅーに!

駆け寄って一発ぶん殴って………………て、あ、あれ?

あたしはガウリイを殴るべき手足、すなわち肉体を失っていた。

ははあーん………ようやく納得のいく答えが見つかった。

あいつは、あたしの夢に介入して好き勝手している、だけなのだ。

ならば解決法は簡単。起きてしまえばいいのだ。

さっそく、起きようと意識を傾ける。

「━━━━━━ガウリイ…………」

ガウリイから身体を離しつぶやく。

無視よ、無視!

『さ〜て、閉じる目もないのに無視できるかな?お姉ちゃん』

「…………????……………っっ☆£¢¥$∞!!!!!!」

ガウリイがびっくりした。

あたしは凍り付いた。

アタシとガウリイがキスをしている。

それもアタシから………………

「な、な、な、な━━━━━━━」

アタシがキスを解く。

しばしば

目をぱちくりさせるガウリイ。

そして、あたしの知らない、男の微笑みを浮かべて、アタシにキスをする。

唇が触れる一寸、アタシは瞳を閉じてガウリイを受け入れる。

「あ、あのねぇ!━━━━━」

ゆらっ

抗議しようとしたら、相手が目の前に現れた。

「どうゆう事なの━━━━━」

「ストーップ!……………おねぇちゃん、誤解してるみたいだから言っとくけ

ど、僕は途中で野暮な介入なんかしないよ?

 この世界を作るきっかけを作っただけ…………このシナリオは君の夢なんだ…

……要するに………」

しゅわぁん

フィブリゾがアタシになり、額同士がふれるような距離にまで近づくと、こう、

つぶやいた。

「そう………『これはあなたの望んだ世界そのものなのよ』」











!!!。朝日が眩しかった。




おわり


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