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石棺は遺体を納めた石でできたお棺です。大きな石を刳り抜いたものや、板状の石を組み合わせたものなど、形も石の種類も変化に富んでいます。一般の人からすればお棺を見学するなど悪趣味と謗られるかも知れませんが、地域毎にその特徴が際立つこれらの石棺を観察するのもこれもまた興味深いものがあります。石棺は直接古墳に埋められているものもありますが、横穴式石室の中に納められていることも多く、玄室にデーンと置かれた石棺を探すのもあなもぐりの一つの楽しみでもあります。ここでは過去に見学した石棺を集めてみました。

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近畿地方を中心に全国の家形石棺を集めました。

舟形石棺・割竹形石棺を集めました。

長持型石棺と箱式石棺を中心に、壷棺や甕棺など素材や時代の古いお棺も展示しました。

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石棺豆知識

古墳の棺は、数種類の材料によって作られました。それには@木材による木棺、A石材による石棺、B埴輪と同様に作られた円筒棺または埴輪棺、C土師質もしくは須恵質の陶棺、D土器を利用した土器棺がありますが、ほかに終末期古墳の特殊なものとして、E麻布を漆で塗り固めた夾紵棺とか漆塗り篭棺のようなのも知られています。

 これらの棺のなかでは、木棺が使用される例が圧倒的に多かったようです。しかし木棺は土の中で腐朽するため、実態が一部でも残存することさえ稀で、全形が確認できた事例も稀にはありますが、木棺の形態変化の全てにわたって、判っているわけではありません。そのため粘土床などの木棺を安置した設備に残された痕跡から推測したり、接合のために打ち込まれた鉄釘や鉄鎹などから推測されています。

 木棺に比べはるかに使用例が少ない石棺や円筒棺(埴輪棺)、陶棺、土器棺の類では、実物が保存され易く、その形態的な特徴や材料などが判明しています。 

しかし石棺の中には木棺の形態に近いものを石材で製作した可能性をもつものもありますので、木棺の不明な点をそれらによって、推測できる面もあります。

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木棺

 木棺は弥生時代から使用された棺で、弥生時代には切り出した木材を板材にして組み合わせた構造の組合式木棺が一般的でした。この組合式木棺は、弥生時代にさかんに作られましたが、出現期の古墳には採用されず、古墳に用いられるようになるのは、前期後半ので、古墳時代中期には、次に述べる割竹形木棺と併用され、後期以降はむしろ組合式木棺が主流をしめます。一方出現期の定型化された前方後円()墳には、竪穴式石室が採用されていますが、その内部に納められているのが、巨大な丸太を刳り抜いた割竹形木棺です。古墳時代も中期になりますと粘土槨などにも用いられ、さらに土壙内に割竹形木棺を直葬した例も見られます。

 組合式木棺の実例としては、奈良県高田市三倉堂古墳出土の例がありますが、それでは、平らな長方形の底板の上に2枚の長側板をたて、長側板ではさむように両端近くへ仕切板をはめこんで棺身を構成し、弧状の断面をした蓋をかぶる構造をしています。

 割竹形木棺は巨大な丸太(直径60cm前後、長さ67m)を二つに割り、両者それぞれ内側を刳り抜いて棺蓋と棺身にするものです。その形状が竹一節を2分した形に見られるので割竹形木棺と名付けられました。先にも述べましたが、一般に割竹形木棺は竪穴式石室内の粘土床や、粘土槨中に置かれます。

 

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石棺

 石棺には組み合わせのものと、刳り抜きのものがありますが、刳抜式石棺は、十分に加工を加えたものですが、組み合わせのものには十分に石材を加工したものと、単に板状の石材を組み合わせて作ったものの2種類があります。後者のものを箱式棺あるいは箱式石棺とよんで、十分に石材加工された石棺と区別されています。

 

.箱式石棺

板の様な石材を組み合わせた石棺で、弥生時代から古墳時代全般を通して作られました。墓壙を掘った中に、板石で四周を囲み蓋石をかぶせるものが多く、横穴式石室内に組み立てられたものもあります。一般的には小型の古墳に用いられたようですが、地方では地域の首長墓クラスの大型の古墳にも採用されている例もあります。

 また九州地方の横穴式石室には、内部に箱式石棺状ないしその発展形態として様々な施設がみられます。その一つに石障とよばれる玄室内に板石を立てめぐらせ、内部をさらに板石で仕切り区画しています。また石屋形とよばれ、玄室内の奥壁の前面に長い板石を2枚の側石の上に載せ、蓋石をもつ埋葬空間などをつくりだしたものがあります。

.割竹・舟形石棺

刳抜式石棺のうち、全体が一般的に細長い形のものは割竹形石棺と舟形石棺と呼ばれています。両者の石棺の区別は必ずしも明確ではありませんが、割竹形木棺の石材版が割竹形石棺で、断面が円形に近いものをいいます。舟形石棺は、割竹形石棺の蓋や断面が半円形からより偏平になったり、蓋の短辺に傾斜面をもたせたりしたものをいいます。これら割竹・舟形石棺は、古墳文化の中心地と考えられている畿内地方にはほとんど存在せず、ほかの地方で多くみられますが、それぞれ石棺を加工する石材の産出地に近い地域で、前期後半から中期にかけて、地域の首長墓的な有力古墳に採用されています。

@.割竹形石棺

3世紀末期〜4世紀初期の古墳の造営が開始された時期に出現した石棺です。形態は弥生時代に存在した刳抜式割竹形木棺を石材で作製したもので、棺全体が細長い形態をした刳抜式石棺です。棺身、棺蓋の断面は半円形をして、小口側に円形の縄掛突起を持つものと、そうでないものがあり、内面には石枕が刳抜かれているものが多く見受けられます。四国地方の前期古墳で特に多く見られますが、他の地方では希にしか認められません。

A.舟形石棺

割竹形石棺より扁平で棺身の断面がU字形をしている刳抜式石棺です。棺蓋の小口側が斜めにカットされているものや、四注式の家形状のものなどその形状は多様性に富んでいます。全て棺蓋と棺身に縄掛突起を持ち、その形状や個数もまた多様性に富んでいます。古墳時代中期、5世紀の中頃に成立したと思われ、九州を中心に、島根県、京都府、福井県、群馬県など畿内以外の地域に特に多く分布しています。割竹形石棺の分布中心地である四国では、同種の石棺の中で舟形石棺に近い形態のものが、早い時期に成立していて舟形石棺の祖形であると考えられています。一方畿内地方では古墳時代中期の古墳で、九州の阿蘇地方で産出する石材で造られた舟形石棺が認められますが、次に述べる長持型石棺が大王墓級の巨大古墳に採用されたのに対して、従属的な中規模の古墳に採用されています。ものが主流となっています。その中には、後に成立する家形石棺に著しく近い形態のものも存在します。

 

.長持形石棺

 割竹・舟形石棺が刳抜式の木棺を模したものであったのに対して、組合式木棺を石で模したのが長持形石棺です。従って組合式石棺と同様に、底石の上に短辺側石をはさみこむ形に長辺側石を組み、それに蓋石をかぶせる構造をしています。短辺側や蓋石に縄掛突起や組合せの溝、また蓋上面の格子浮彫文様などが施されたものもあります。   

古墳時代中期、巨大前方後円墳が盛んに造られた時代に一過性に出現し、後期の初めの頃まで用いられます。割竹・舟形石棺が地方首長の棺であるのに対して、長持形石棺は、巨大古墳時代の畿内地域でみられる、有力な大前方後円墳に採用された王者の棺でありました。その分布は畿内の巨大古墳に集中していますが、九州から関東地方でも、地域の有力古墳に散見されています。また兵庫県の一部地域にはこの長持型石棺が集中する地域がありますが、長持型石棺の石材として使用された竜山石の産出地との関連も考えられ注目されています。

 

.家形石棺

 棺蓋が四注屋根形している一連の石棺です。刳抜式と組合式の二種類があり、両タイプとも棺身の部分は基本的に箱型ですが、刳抜式の古いものでは、棺身の断面がU字形をしているものも存在します。刳抜式は舟形石棺を基に成立したと考えられ、舟形石棺に分類される石棺の中には、刳抜式家形石棺に極めて近い形状のものも存在し、形態面から両者を分けることは困難になっています。家形と舟形の相違は棺身の長辺と短辺の比率から区別するのが一般的です。縄掛突起は通常棺蓋にあり、長辺側に二対、あるいは長辺側に二対・短辺側に一対が基本です。しかし長辺側の縄掛突起が二対以上のものや短辺側にのみ持つもの、また終末期では縄掛け突起の無いタイプも出現します。これらの家形石棺は古墳時代中期の終わり頃、畿内地方に出現し、後期では畿内の有力古墳を中心に採用されました。その原型となったと考えられるのが、大阪府長持山古墳の2号棺で、舟形石棺に分類されるものの、蓋石の形状は後に出現する同種の石材で造られた家形石棺に極めて近いものです。こうした刳抜式の家形石棺は、畿内を中心に岡山県・広島県東部の古代吉備の地域や、北中部九州の周防灘沿岸地域など瀬戸内地方、また東海から関東、その他鳥取県でも数例が確認されていますが、瀬戸内沿岸でも四国では一例も確認されていません。一方6世紀中頃に成立した組合式の家形石棺では、長辺側の石材を短辺側に挟み込む構造をしていますので、同じ組合せ式石棺である長持型石棺とは異なる構造をしています。

また家形石棺に分類されるもので九州の肥後・筑後や出雲では棺身の一方に横口を刳抜いた独特の石棺が分布しています。この種の石棺にも刳抜式と組合式がありますが、その形態は多様性に富み、蓋石に直弧文などが線刻されたものなども存在します。先の家形石棺は通常横穴式石室内に納めるのが基本ですが、出雲地方を中心にした地域ではこの横口式石棺に羨道が取り付けられた石棺式石室といわれる独特の墓制が発達しました。

@.畿内型家形石棺

 畿内の家形石棺では、蓋上部の平坦部が狭く、蓋の長側斜面にそれぞれ二個、合計四個の縄掛突起を持ち、蓋と身の部分を印篭合わせにした刳抜式のものが、中期の終末期に現れます。その後、丸味をもっていた縄掛突起が角張った方形断面に変わり、蓋の短辺にも各一個の突起が加わり合計六個の突起を持つようになります。続いて突起の位置も蓋斜面から側面に下がり、やがて縄掛突起のないものが現れます。一方後期中頃、6世紀中葉には、組合式の家形石棺が出現します。この組合式家形石棺も様々な類例がみられますが、基本的には、長辺側石の外側に短辺側石を組み合わせる構造で、中期の長持形石棺とは構造上異なっています。組合式家形石棺では、一般に蓋の形状が刳抜式のものに比べ、薄く平板になるのが多いようです。また石棺を構成する板材の数も、六枚から十枚と変化に富み、縄掛突起の数も各長辺に四個とか、各短辺に二個とか多い例が知られています。こうした畿内型の家形石棺は九州を除いた各地でも製作され、例えば岡山県地方や、東国、愛知県の木曽川流域、静岡県東部、群馬県東部などでみられます。

A.九州型家形石棺()

 先の畿内型家形石棺とは全く形態や性格を異にする家形石棺が九州地方に分布しています。九州では熊本県を中心に約70例もの家形石棺が知られていますが、その多くは底石を持たないものです。これは弥生時代以来の箱式石棺が、屋根形棺蓋を持つ舟形石棺の影響を受けて出現したもので、本来は棺というより槨()としての機能をもつものとみられています。これらの内、横穴系墓室の影響を受けた横口式のものがいくつか知られ、石棺式石室とよばれています。

B.出雲系家形石棺

 島根県の出雲を中心とする山陰地方にも、特徴ある家形石棺が数多くみられます。特にこの地域では、横穴式石室に限らず、横穴内に用いられたものも少なくありません。この出雲系の家形石棺には、長側辺側(平入り)に横口をもつものが多くみられ、横口付家形石棺とよばれています。また石棺式石室もおおくみられ、おそらく九州の横口付の石棺式石室の影響により出現したものと考えられていますが、九州地方のものは、短側辺側(妻入り)に横口の付いた石棺が多くみられます。年代は後期から終末期にかけてのものですが、ただ同じ山陰地方でも鳥取県などでは畿内型の家形石棺が多いようです。

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その他の棺

.円筒棺・埴輪棺

 埴輪の中でも特に円筒埴輪や朝顔型埴輪を棺に転用する例は、すでに弥生時代後期の特殊器台形土器の段階からみられ、古墳時代になってからも埴輪の存続期間を通じて広くみられます。前期の後半では基本的に円筒埴輪と同様の技法で初めから棺として製作された大型円筒形の棺(特製円筒棺)が出現し、特に中期には盛んに採用されます。一般にはお大型古墳の中心埋葬以外の墳丘内、墳裾や周辺、また小古墳の棺となるのが多いようです。集中的に出土する地域もあり、埴輪製作と何らかの関係を有する場合に用いられたと思われています。

.陶棺

 陶棺は後期から終末期にかけて、近畿地方から中国地方に分布し、特に岡山県地方に濃密に分布しています。この陶棺には土師質のものと須恵質のものがあり、また形態的にも亀甲形陶棺とよばれる丸く盛り上がった蓋を持ち、蓋、身ともに格子状の凸帯をもつものと、屋根形の蓋をもつ家形陶棺があります。後者は更に蓋部の形態から、四注式と切妻式の2者に別れます。岡山県地方の陶棺は7世紀後半にも存続し、8世紀の家形火葬蔵骨器にまでつながるものと考えられています。

.土器棺

 壷や甕などの土器を棺として利用することは、縄文・弥生時代以来みられますが、古墳の墳丘内やその周辺にも土器利用の棺がある場合が少なくありません。棺に利用される土器には土師器も須恵器もあり、形態も壷、甕など様々で、単独であるいは2個体を連結させて使用しています。時代も古墳時代全般にみられますが、ただ埴輪棺と同様、古墳の中心的埋葬施設に用いられることはなかった様です。また弥生時代の九州の甕棺のように、特別に大型の土器を製作するようなことはなかったようで、主に多くは子供用と考えられています。

.漆棺

 終末期後半、7世紀後半から8世紀初頭の古墳の中には、夾紵棺(乾漆棺)を用いた例がいくつか知られています。夾紵棺は布を漆で張り合わせて作られたもので、こうした乾漆の技法は白鳳から天平時代の仏像にも応用されていますが、きわめて高価なもので、こうした棺を用いているのは一部の支配者層の古墳であるといえます。この時期には完全な夾紵棺以外にも、木心の乾漆棺など植物性繊維を編んで作った篭状容器に布着せして漆を塗った漆塗篭棺や、木棺や石棺、陶棺などに直接漆を塗った漆利用の棺が盛行します。

 

参考資料

古墳の知識T墳丘と内部構造・白石太一郎・東京美術

 

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